オンライン学習会に参加しました「どうしたらいいの?知的障害や発達障害の性教育」

東村山・生活者ネットワークのオンライン学習会「どうしたらいいの?知的・発達障害児・者の性教育」に参加しました。

講師は、宮崎県の特別支援学校教諭として知的・発達障害児や医療的ケア児に11年間関わってこられた門下祐子さんです。

◆知的障害者の性の権利については、障害者権利条約第23条(家族及び家族の尊重)で言及されており、また、世界性の健康学会による「性の権利宣言」では、いかなる事由によっても差別されない権利、教育を受ける権利、包括的な性教育を受ける権利※等が掲げられている。

(※国際的には、自らの権利を守るためすべての世代の人が獲得していくことを目的とする「包括的セクシュアリティ教育」を推奨。)

しかし、これまでの日本での性教育の歩みをみると政治的バッシングにあおられやすく、学習指導要領では、性教育について歯止め規定がある。東京都教育委員会では、学習指導要領の範疇を超える指導をする場合は、保護者の了解を得なければならないとしている。また、性教育の手引きは改訂されたが、管理職は保護者の了解に敏感で、学習指導用領内の性教育についても現場は萎縮しているように思える。

しかし一方、日本性教育協会「若者の性」白書第8回青少年の性行動全国調査報告によると、中学生男子の性交経験率は約4%、女子は約5%であり、性的同意年齢は13歳。学習指導要領との矛盾がある。また、インターネット上では誤った性情報が氾濫しており、「エルサゲート」などの問題もあるところ、障害特性によってはそれらの内容をそのまま信じることもあり、支援に配慮が必要。どの子に対しても、正しい性の知識を伝える必要がある。

いつから性教育を、については、できるだけ早くから。昨年は小学校や保育園の実践がメディアに取り上げられた(全国で認可保育園を経営する「どろんこ会」や大阪市立生野南小学校等)。例えば、同じ小学部の児童でも実態は様々。発達段階という言葉にとらわれすぎることなく、子どもたちの性の権利や学ぶ権利を尊重し、子どもたちの実態や興味関心から出発していく。

また、包括的性教育は、学校教育だけでやればよいのではなく、ライフステージに応じた支援が必要であるし、教えるものではなく、学びあうもの。教員間、保護者、家族間、地域、専門家、行政職員など皆が協働の主体となる。

◆知・肢併置校で小・中・高等部があり門下さんがかつて所属していた学校では、性教育を「生命の尊さ」を基盤とし、「生き方に関する教育」(生教育)と捉え、一つひとつの授業や生徒との関わりを大切にしていた。

保健体育部管轄ではなく、独立した性教育推進委員会もあり、

・年間指導計画の作成と性教育授業(年10~13回)の運営

・家庭と連携するための「せいきょういく通信」の発行(年4回)

・情報や教材の提供

など行い、全職員で性に関する教育に取り組んでいた結果、保護者の受け止め方は高評価で、卒業してなお相談がくることもある。

知的障害児ついては、性教育をするにあたり様々な課題があるなかにも、それらを学ぶチャンスと捉える。また、重度の知的障害があることで保護者と子どもとの結びつきは強く、依存関係に陥らざるをえない可能性があるが、保護者と子どもが対等な関係を築くためにも包括的セクシュアリティ教育や支援が必要。

◆最後に、名古屋女子大学健康科学部看護学科の杉浦絹子教授による知的障害のある方にも分かりやすい「赤ちゃんを産んだ後の避妊」など杉浦 絹子 (Kinuko Sugiura) – 資料公開 – researchmap

様々なサイトや文献の紹介がありました。

紹介された文献の一例

◆参加を通じて、特性がある方に対しては、様々な特性を把握し配慮しながら性教育を行う必要があることが分かりましたが、特性ある方が理解できる性教育は、誰にとっても分かりやすい性教育です。そうした取り組み事例を知ることは、性教育を進める上で参考になるのではないでしょうか。

また、ある小学校特別支援学級での取り組み事例の紹介では、歯止め規定の範囲内でも、断り方、断られ方の練習などできることはあることも認識できました。

学校教育限らずとも、様々なライフステージで、地域で取り組む性教育の必要性についても認識できた学習会でした。そうした視点をもって市の施策を点検してゆきたい。