2020年12月定例会一般質問 ②化学物質過敏症への市の対応を問う

【質問にいたった経緯

児童生徒の保護者間で「給食白衣の香りが気になる」とのやりとりがよくなされますが、香りは嗜好の問題と大抵の方は学校への相談までは躊躇するようです。

香料は、政府が安全性の評価をせず、業界の自主規制に任せていますが、例えば、柔軟剤の香りを長持ちさせるマイクロカプセルの材料であるイソシアネートは、毒性が極めて強く欧米では規制されています。キャップ1杯に約1億個のマイクロカプセルが含まれる製品もあるようですが、洗濯をすると、その約2割は衣類に付着し飛散、吸入すると発症の原因となり、また約8割は下水に流れ、マイクロプラスチック汚染の原因となるといわれています。

化学物質を直接・間接的に身体に取り込むことで化学物質過敏症を発症する方が増えていますが、誰がいつ発症してもおかしくなく、環境省の2015年の報告では予備軍を含めると人口の7.5%、13人に1人とされており、NPO法人化学物質過敏症支援センターへの相談件数は年間2,000件を超えています。

発症すると、建物の建材、制汗剤や消臭剤、インクや印刷物、殺虫剤や農薬などごく微量の化学物質に反応し、重度になれば公共交通機関を使えず診断すらままならない、学校や職場にいけず生活がなりたたない、家族の理解を得られず家庭が破綻するなど暮らしに深刻な影響をもたらします。

日用品や化学物質過敏症についてまずは知り、その後の各自の選択が変わる可能性がでるよう周知啓発を進めることが、人体負荷、環境や生き物への負荷軽減にも繋がってゆきます。

子どもはとくに大人より配慮が必要であるところ、昨年9月~本年1月に、東京・生活者ネットワークによる「学校保健における「香害」対策についてのアンケート調査」実施結果(回答649校)も踏まえ、主には学校での周知啓発や環境設定について質問をしました。

【市の答弁】

学校への周知啓発

→学校から体調不良への対応の報告はない。

→校長会・副校長会等通じて化学物質過敏症について教職員への周知するよう伝えている。教職員の研修、保護者への周知啓発は他部署と連携し研究してゆく。

→健康調査票(年に一度家庭で記入)に自由記述できる箇所があるため、「化学物質過敏症」と明記しての記入欄は設けない。

→給食白衣の個別対応をしている学校はあり、校長会、副校長会、養護教諭の保健連絡会で周知をしてゆく。

→保健室は、化学物質過敏症の児童生徒が休める環境であるよう配慮されている。

幼稚園・保育園・学童クラブ

→市への相談はなし。

→今後、ポスター掲示を依頼してゆく。

更なる消費者への啓発

→昨年化学物質過敏症に関するポスターを作成し、公共施設での掲示を開始。今後は、ポスターを掲示していない小中学校や保育園、幼稚園にも掲示を依頼してゆく。

→あわせてHPにて記載。広報での周知やチラシ作成は、今後消費生活センターへ寄せられる内容や件数で研究する。

【答弁を受けて】

・例えば、東京・生活者ネットワークのアンケート結果によると、啓発ポスターの掲示、保健だより・学年だよりでの周知、朝礼や学年集会、学級活動などでの注意喚起等、学校ごと様々な取り組みがなされているようですが、これらはどれもやる意思があれば過大な負荷を伴わずともできることです。

・調布市には「シックハウス防止に関する学校チェックリスト」があり、芳香剤、消臭剤を禁止。「調布市立学校における室内化学物質対応マニュアル」では、化学物質の影響を受けやすい児童・生徒への配慮事項が明記されています。

環境設定については学校ごと対応が違う事柄ではないと考えるところ、例えば調布市のような指針をつくることは、学校関係者が事前に一定程度備えられゆくゆくの現場負担を減らすことにも繋がるのではないでしょうか。

・給食白衣については、もしも香りが気になりながらも着用し配膳しているお子さんがいると想定した場合、そもそも必要なのかというところにゆきつきます。例えば高学年になると家庭科の調理実習があり、各家庭からのエプロン・三角巾持参で事足りるようにも思えます。子どもたちの安心安全を守るために、従来当たり前にあるものから見直す必要があると意見しました。

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化学物質過敏症については、「因果関係が分からない、声があがっていないから発症したのちの個別対応」ではなく、あくまで予防原則の観点から備えるべきと考えます。

新潟県立看護大学の永吉雅人准教授が2017年、市内62小中学校の1万1271人に調査したところ、化学物質過敏症の兆候が見られる児童生徒はほぼ全ての学年で1割以上おり、学年が上がるにつれて増加傾向が見られ、中学3年は小学1年の2倍以上であったそうです。

化学物質過敏症発症対策のみでなく、環境・生き物などへの影響もあるところ、社会の持続可能性にも関わる問題です。

製品が市場にある限りそれらを用いらないよう強制はできないのですが、人体や環境負荷に配慮して公共施設での石鹸利用を実現できている昭島市ならば、化学物質についても一貫性をもち、予防原則の観点でもって市からできる取り組みが増えることを期待します。

※動画は、以下の昭島市 市議会のHPよりご確認頂けます。議員1人の持ち時間は60分。1回目の質問は35分ごろまでで、その後、一問一答の再質問にはいります。

https://smart.discussvision.net/smart/tenant/akishima/WebView/rd/schedule.html?year=2020&council_id=32&schedule_id=1