武蔵野市 学校給食勉強会のご報告

先週、武蔵野市の学校給食勉強会に参加させて頂きました。

当日伺えたお話、頂いた資料をもとに、武蔵野市の取り組みを以下の通り報告させて頂きます。

◆子どもたちによりよい給食を届けるための運営法

武蔵野市では、「食材本来の味を大切にする手作り調理」を学校給食提供の主眼のひとつに掲げる(手作り調理をすることでコストダウンとなり、別の主眼である「安全に配慮した食材の厳選」の実現に繋がる)。

手作り調理をはじめとする様々な取り組みを将来にわたって確実に進めるためには、市が一定の関与をする必要があるが、民間企業への給食事業委託では市の取り組みや人材育成について契約に盛り込むこと困難であると指摘された。より確実なのが財団方式であるとして、一般財団法人武蔵野市給食・食育振興財団による運営を実施。

【財団について】

平均年齢は40歳。食材調達、献立作成、調理、食育含めトータルに関われるため、働きがいがあり、結果、安定雇用にも繋がる(5年以上務めると無期限雇用が可能)。

教育委員会と財団で月一度集まり、そのときどき話し合える関係性を保つ。

【親子方式について(自校に調理施設を持つ学校(親)が、調理施設がない学校(子)へ提供する方式。昭島市でも中学校は親子式に移行予定)】

児童生徒数の増減に伴い、2019年4月~1カ所が親子方式。

「子」校からは、提供される給食が配食時間減で温かいなど自校に近くなり、評判がいい。

一方、「親」校からは、献立面などで従来通りいかなくなることでの不満はでる。

配送が共同調理場方式より高くなるが(ひとつの親子ごと配送車1台、運転手1人の確保)、トータルでみるとコストダウン。

【今後の計画】

・武蔵野市の長期計画では、共同調理場の老朽化、きめこまかな食育の実現、立替え用地探しの困難性、児童増見込みへの対応など総合的に勘案し、

20年以上かけ小学校建替え時に順次自校化(中学は共同調理場のまま)。

・中期経営計画では、財団のビジョン(「給食のチカラで未来を創る。」)や今後3年間の進むべき方向、取り組みを明らかにした。学校のカリキュラムなどと連携しさまざまな食育活動を展開していく。

◆食材

【選定について】

・PTA、学校教諭及び財団職員で構成する食品選定委員会で毎月決定。

・いちから手作り調理をし、加工食品を使わないことでコストダウンを図り、代わりにやや高くても良い食材を購入可能に。

また、学校給食会から仕入れるという発想ではなく、何年も懇意につきあう調達先もあるところ、食材のよさ、価格面含め総合的な良さから仕入れ先を決める。

【地場野菜について】

市内産を優先して活用しており、この10年で徐々に増加(2010年は20.6%、2019年は24.7%。財団としてはシェアを増やしたいが、供給が追いつかず30%は越せない)。

財団と市内農家が協議をしたり、栄養士・調理員が市内農家を毎年2月7月訪問して野菜の生育状況を確認、生産者との意見交換の場を設ける。

作付け状況と献立のすりあわせや生産者の苦労や新しい取り組み等、様々な情報交換を行う。安全な食材を子どもたちに提供するために農薬や化学肥料の使用についても話し合う。

生産者とコミュニケーションを図ることにより、子どもたちに生産者の努力や想いを伝える食育面でのメリットもある。

◆食育

【児童生徒への食育】

・給食の時間に栄養士や調理員が、小学校の全クラス(100クラス)を1年に一度まわる(中学は給食時間が短く、昼の指導が難しい)。

・各学年の授業単元に食育の要素を取り入れ、教諭と栄養士とのチームティーチングによる授業や、中学校では家庭科調理実習の補助授業も実施。

・調理施設を使った「子どもの調理実習」や、市立中学校の家庭科室を使った「出張!放課後調理実習」を実施。

【ひろく市民に対しての発信・取り組み】

・小学校給食体験講座:小学校入学前保護者に給食の調理実演や試食会を開催。

・市報で学校給食のみ単体で扱う発信をしたり、FBやクックパッドからの発信。

・食育フェスタ:「触れる・感じる・体験する」をテーマとし、体験型プログラムや給食食材の販売を実施。

・夏休みコミュニティ食堂:夏休みに、手をあげた公的施設(直近で三カ所)や児童館(直近で1カ所)と協働し、学校給食を提供。

小学生100円、中学生200円、高校生以上300円。孤立を防ぎ、皆で食べる楽しさを伝えるとともに、夏休み中に低下しがちな子どもたちの栄養面のサポートも考慮。幼児から高齢者まで参加し、子どもでも簡単につくれる朝食向けレシピの紹介、市内の農家の講話、食育クイズなどのミニイベントも実施。

◆その他

【給食費】

小学校1~2年:260円、3~4年:270円、5~6年:280円

中学校1~3年:340円

【コロナ禍での工夫】

・キャンセル食材の活用:給食業務の中止に伴いキャンセルできなかった魚、肉類、果物は、フードバンクに寄附。老人ホーム、保育園、学童保育にカップヨーグルトを配布。

・給食弁当の実施:休校中の学童クラブの児童を対象に、給食弁当を2週間、毎日150食提供。また、栄養士からメッセージを記入した「かけ紙」をお弁当に巻き、子ども達に残さず食べてほしい想いをこめた。

【食器】

調理員中心の食器選定委員会で、現場からの声をくみ上げる。

中学校については、中学校6校の生徒会代表とデザイナーが一緒に考えたオリジナル食器を使用。

【放射能測定】

平成24年、市民要望により、北町調理場に市がゲルマニウム測定器(約2,000万円)を購入し、シルバー人材3名で測定。

実際の測定は、6校分丸ごとミキサーにかけ週に1回実施、食材ごとにも週に2.3回実施。いまは保育園給食も測定をする。

放射能にこだわり続ける議員が2~3名いるため、測定が継続されている。

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以上、最終受益者である子どもたちにまず何を届けたいかから逆算しての様々な取り組みが非常に勉強になりました。

現在、核家族化で食についての知恵の継承が難しいご家庭が多い、

また主には物理的に時間がとれない経済的余裕がないなどの理由から、食への向き合い方が各ご家庭ごと非常に異なる状況であることは、私もいち保護者として実感をするところです。

学校給食に期待される役割が、従前より増している社会状況です。

武蔵野市の取り組み内容のすべてを昭島市にも求めてしかるべきとは思いませんが、取り組み姿勢と常に試行錯誤する様子が非常に素晴らしかった。これがまずあって、取り組み内容がついてゆきます。

昭島市では子どもたちに対し、将来まで見越して何を届けたいか、また何を提案できるのか、声を伝えてくださる市民の方々と考え続けたいです。

こちらの書籍をご紹介頂きました。