主権者教育について考えるオンライン企画に参加しました
昨日は、オンライン企画 「スウェーデンの主権者教育を日本でどう実践するか?」に参加しました。
「Prata Politik” (政治について話そう!)」 というスウェーデン若者市民社会庁(MUCF)が出版した教材がありますが、
そちらを日本語に翻訳した『政治について話そう!〜スウェーデンの学校における主権者教育の方法と考え方』刊行記念の企画でした。
モデレーターは独立行政法人国立青少年教育振興機構 青少年教育研究センター 研究員の両角達平さん。
ゲストは認定NPO法人カタリバで学校の校則見直しを推進する「ルームメイカー育成プロジェクト」の事務局を担当する古野香織さんと、
高校生への主権者教育を実践しており最近著作もだされた教諭、大畑方人さんでした。
【高校での取り組み事例や、新しい科目「公共」について】
ゲストの大畑さんよりお話がありました。
◆2018年に高校の学習指導要領が改訂され、新たに2022年から公共を高校1-2年で全高校生が履修することになりますが、
18歳に投票権が引き下げられた際に
総務省と文科省が作成した高校生向けの副教材「私たちが拓く日本の未来」に記載された
国家・社会の形成者として求められる力は、
- 論理的思考力(とりわけ根拠をもって主張し他者を説得する力)
- 現実社会の諸課題について多面的・多角的に考察し、公正に判断する力
- 現実社会の諸課題を見出し、協働的に追求し解決(合意形成・意思決定)する力
- 公共的な事例に自ら参画しようとする意欲や態度
と位置づけられいるそうです。
※副教材は総務省のHPからも読めます。
正解が一つに定まらない問いに取り組む学び、
学習したことを活用して解決策を考える学び、
他者との対話や議論により考えを深めていく学びに対する学習方法として、アクティブラーニング型の授業を提示したり、
学習活動については、模擬選挙、模擬請願、模擬議会などを紹介しているそうです。※
https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/senkyo/senkyo_nenrei/01.html
大畑さんは上記の力を、以下に置き換えていました。
- 知的好奇心:社会で起きている事柄に関心をもち自分事として捉える
- 批判的思考力:社会課題を見つけ出し、多面的・多角的に考察する力
- 創造力:課題解決に向けて、新しいアイディアを生み出す力
- 協働力:他者と協働しチームとして課題解決に取り組む力
- コミュニケーション力:考え方の異なる他者と対話し、意思の疎通をはかる力
- 合意形成力:他者との熟議を通じて、合意を形成していく力
- 市民性:持続可能な社会の実現に向けて、主体的に社会参画する力
より分かりやすく定義づけられた言葉をみると「そうしよう」「そうありたい」と意識を向けることができます。
まずは、認知するところから。
◆新しい公共の教科書では、生徒が主体的に答えがない問いについて追求していくページが盛り込まれており、
長野県の松本高校での請願の実践例が取り上げられたりしているそうです。
大畑先生ご自身の取り組み例として、教員の主義・主張を押しつけず様々な政策を調べさせる(政治的中立性)など主権者教育を実践する上での課題に留意しつつ、
高校生が地域住民にインタビューをし、政策提言をする授業や、
請願はしていないものの、区役所の職員や区議会議員に学校にきてもらい、生徒の提案をしコメントをもらうという授業をしたそうです。
政治ときくと遠い存在に感じる生徒が多いが、学校のなかにも政治がある。そこでも民主的に物事の決める必要があるという言葉も印象的でした。
【大学の授業での生徒の反応や、校則・ルールを変える取り組み事例】
ご自身が投票権を持った際にどうしてよいか分からず戸惑った経験を持つものの、その後のスウエーデン視察で大きなインパクトを受けたという
ゲストの古野さんがおはなしくださいました。
◆古野さんが「スウエーデンの民主主義教育」授業後に大学生の反応からみえてきたことは
・日本の学校における「生徒-教師」間の権力関係
・学校内における意思決定への生徒の参画の必要性
・そもそも学校現場に、民主主義・平等・多様性の価値が浸透していない
ということであったそうです。
◆次に、日本の学校において民主主義の価値を高めていくための事例として、ルームメイカー育成プロジェクトを紹介くださいました。
ルームメイカー育成プロジェクトとは、「既存の校則やルールに対して生徒が主体となり、先生・保護者などの関係者との対話を重ね納得解を作ること(ルームメイキング)を通して、課題発見・合意形成・意思決定をする力(市民性“シティズンシップ”)を築くプロジェクト」であり、
「対話的・民主的な合意形成のプロセスを経て、生徒たち自身が当事者として学校・保護者・地域などと協働して校則やルールを変えていくことで、「自分たちの学校は自分たちでつくる」ことを応援する」プロジェクトであるそうです。
また、ルールをつくることがゴールではなく、振り返りや見直しを行うことも重要視なさっていました。
日本の学校に民主主義的な価値やプロセスを重視する文化もしくはシステムをどのように根付かせていけるか考えるにあたっては、そのための現場の余白・余裕も欠かせないものであるとその後の対話やチャットでも意見が飛び交っていました。
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コロナ禍で政治との距離が縮まった方がいると思います。
しかし、やはりまだ、政治という言葉に躊躇する、距離を置きたい大人が一定程度いることも事実です。
投票率の低さからして、そもそも政治参画の仕方や参画の意義について教えられたり、関わる・変える実体験をしたのち投票権を持つにいたった方が圧倒的に少ないことに起因するのではと思うのですが(日本財団の18歳意識調査では自分の働きかけで社会を変えられると考える若者が日本には少ないとのはなしもありました)、
生活と政治は切っても切り離せず、生きている限り、自分の意思と関わらず政治はついてきます。
政治課題は国レベルのはなしでなくとも、例えば学校など身近なフィールドにもあります。難しいこと、他人事ではありません。
身近なところから関わり変えていく経験をできる若者が
様々な実践を通じて増えてきているはなしに期待を持てました。
実践にあたっては様々な課題もあるかと思いますが、各地で主権者教育について様々な取り組みがひろがってゆくことを期待します。