「こどもと話す民主主義」~教育者 工藤勇一さん、デンマーク在住 澤渡夏代ブラントさんのトークイベント

先月(公財)社会教育協会日野社会教育センター主催、
教育者の工藤勇一さん、デンマーク在住の澤渡夏代ブラントさんのトークイベントに参加しました。

澤渡さんは、日野社会教育センターがこの25年間30回福祉国家としてのデンマークを様々な分野から学ぶにあたり、研修をコーディネート。
本年著作「デンマークにみる普段着のデモクラシー」を出されました。

デンマークでは、対話や協働、相互理解と尊重、みなが幸せにという全体利益がはっきりした民主主義を
幼少期から実感する仕組みが根底にあるから、様々な施策がイキイキとしている

成人するまでのプロセスをみても
女性の社会進出が進み、子どもの96%が保育園で育つ環境のなか、
子どもをどういう大人に育てたら良いかが社会的議論の対象となり、全国の保育園全てで自己肯定感を高める保育計画・カリキュラムをもっている

その後の教育においては、様々な選択肢を設け、
18歳以上になると75%が2年程度のギャップイヤーを過ごし
仕事をしてお金を稼ぎ世界をみて自分の進みたい大学教育の道を進むことなどおはなしくださいました。

工藤先生は、
日本の借金は約1千兆円、高齢者の貯金は約2千兆円といわれている。
福祉施策が充実しており貯蓄しなくてもよい国もあれば、
日本では高齢になった際に安心して暮らせないから、貯蓄される。
これは高齢化・人口減少するなかで悪循環

ものが売れず、安価で競争し、労働環境が悪化する社会構造を変えないといけない。
そのためにも今こそ自律した人材を育てるべきだが、日本の学校教育では与え続ける教育をしている
手をかけるほど自律できなくなり、自分がうまくいかないことを誰かのせいにする。
つまり、当事者意識・主体性を失い、幸福度・自己肯定感が低くなる

人はみな違っていて対立が起きるのは当たり前。
みなが仲良くできないところからスタートし、
対立を思いやりの心で解決するのではなく、
対話で解決する方法を身につける
この際に必要なのは、みながOKな最上位目標の設定。

ヨーロッパでは戦後誰も置き去りにしない対話の方法を考え市民教育を展開。
そして今の姿がある。
学校が変わることで、社会も変わることをおはなしくださいました。

◆企画にはお子さんも複数参加しており、その後の対談やQ&Aでは、お子さんからの質問も。
以下のようなはなしに及びました。

○例えば公園デビューなどでは親が子どものやりとり・トラブル解決に介入する姿がみられる。
子どもたちがトラブルを経験した際に大人が介入せず自分で解決できれば
自尊心をもって折り合いをつけることを学び、人のせいにしない
育ちのなかで民主主義を学ぶと体験的に分かるようになる。
また、自己決定をすることで自己肯定感が高まる。
ほめて育てても自己肯定感は高まらない。

○これからの時代はひろく浅くではなく、自分の進路は狭めてとんがったほうがいい。

デンマークでは保育園で遊びが一番大事。
塾はなく、夏休みの宿題もない
学校嫌いというカテゴリーはあるが不登校ではない
学校嫌いの子のために教育のなかで美容師の仕事・食の仕事・動物の飼育等様々な選択肢をとれる。
15%が中等教育に入らないが、生活保護のカテゴリーにはいってほしくないためこうした取り組み。

○デンマークでは寝たり転がって授業を受けている子もいる。
水飲みやお手洗いも授業中自由。
子ども一人ひとりに学ぶ姿勢があるという考え方。
アメリカでも例えば椅子が沢山あり選べる。
座ることが苦手な子にはたったまま勉強できるような椅子もある。
日本では小1が椅子に座れない小1プロブレムという言葉があるが、
欧米ではそのような概念がない。
いまは幼保でまで座れるようにしておくような動きがあるが、本来座れないことを問題視してはいけない。

○社会に愛された子は社会を愛する。
ポジティブシンキングで、悪いところではなくいいところをみつけて生活する。
デンマークでは、国としてのゴールに向かい、一人ひとりが社会の一員という位置づけで連帯し、いち国民として生活する。

○デンマークは素敵で日本はダメなのではない。
ありのままを受け入れて
自分のいる場所を幸せにできるか。
身近にあるところから当事者として変えていく

◆スピーカーのはなしはもちろん、
日野市の社会教育センターや、市民協働の取り組みも素晴らしかったです。

 

よりよい暮らしをと考える際に重要なのは
一人ひとりが当事者意識を持ち社会に関わっていくこと

お任せでは社会はよくならないことを、
最近様々な機会で様々な立場・たち位置の方が発信している場に参加しますが、
今回もデンマークの事例、工藤先生がいらっしゃる学校、横浜創英での試行錯誤の事例が大変参考になりました。

自ら関わることで、社会が今より少しでもよくなり、自分の幸福度にも繋がることを再確認。

当事者意識を持てる仕組み(主権者教育とも置き換えられるでしょうか)を子ども期から学校に、あるいは地域にどのようにしてつくれるか考えてゆきます。