大阪府泉南市子どもの権利条例とそれに根ざした取組、公益社団法人子ども情報研究センター

8月5日・6日と関西方面に視察へいってまいりました。
1日目は、子どもの権利の見聞を深めるため大阪府へ。

◆まず、子どもの意見も聴きながら、2012年10月、先駆的に子どもの権利条例を制定した泉南市へ。

条例制定に関わられた健康子ども部子ども政策課職員
子ども会議の実施に関わられいまは学校現場の校長先生
市民の立場で条例制定に関わったのち、今にいたるまで条例委員として市民モニターの活動をなさる方々からと
それぞれのお立場からのおはなしを伺うことができました。

泉南市では、条例に基づき
①「せんなん子ども会議」
②泉南市子どもの権利の日
③子ども含めた市民への幅広い学習機会
④市民モニターによる検証
などの取り組みが行われています。

①「せんなん子ども会議」
小学4年生~18歳対象に、子どもの意見表明と参加をすすめる仕組みのひとつです。

まず最初の工夫は、チラシの配り方。チラシに伝えてほしい文言をつけて学校に渡します。
それも子どもたちから、「ただ配られただけでは読まないが、先生から一言あれば読む」との意見からなされた工夫です。

中学生になると部活動もあり、毎年小学生の参加が多いとのことではありますが、
それでも様々な学校・学年の子どもが参加し、
子ども会議の活動内容から子どもが決め、最後には毎年1年間の活動や子どもの意見を市長に報告。
市長はアドバイスをしながら、施策にできるものは施策にしていくとのこと。

取り組み例のひとつは、「公園」。
現場をみるのみならず、役所職員にもはなしを聞きながら自分たちでできることを考えます。
職員とコミュニケーションをとることで、逆に職員から子どもたちに相談をもちかけるケースもあるようです。

活動からみえてきたことは、
・参加当初は「~してほしい」という状態であった子どもたちが最後には「何ができるか」と、権利の主体である自覚をもっていく。
・相談できる大人に相談をしたり、大人に「おかしい」といえるようになったり、権利を守る行動をとれるようになる。
・市長報告会で毎回いっていたのは、「条例があり、子ども会議があり、こうして意見をいえるため、条例を大事にしてほしい」ということ。条例の大切さを伝える機会になる。

生きた主権者教育の場になっていました。

②泉南市子どもの権利の日
毎年11月20日は子どもの権利の日。
例えば学校では、最低でも全校集会ではなします。

今回おはなしを伺った校長先生は、全学年で系統的に年1~2回は子どもの権利学習をなさっていますが、
そこまでの取り組みができていない学校においても、11月20日に子どもたちに子どもの権利について伝える日があることは、教職員にとって学ぶ機会となります。

③子ども含めた市民への幅広い学習機会
④に書く報告書にも示されていますが、②の学校での学習のみならず、幼児期からの子ども対象の学習、市職員への研修、乳幼児期から中学卒業以上まではばひろい保護者への学習機会が担保されています。

④市民モニターによる検証
毎年の施策の取り組み検証を市が行うこととあわせて、条例委員による市民目線での確認も行われています。

「市民感覚を取り込み、しっかり記録を積み重ねていく」との言葉通り、
泉南市のHPには第12次までの報告書が公開されており、条例に基づく検証がなされていますが
素晴らしい検証内容です。
https://www.city.sennan.lg.jp/kakuka/kenkoukodomo/kodomoseisaku/kodomonokennri/16kensyou/index.html?fbclid=IwY2xjawEkxLZleHRuA2FlbQIxMAABHeBRflArBWvlefTZ_dfT0W-ptq3srxCUjseOa3OBDrFk_r-nqAMDMg8Sqw_aem_14u6REcV27HFPuxJXl2NOw

検証に基づきいまみえいる課題(子どもの申し立て)に対しても
しっかり仕組みをつくり対応を考えられているとのこと。

今後の取組も注目しますが、
関係者が変わっても条例があることで施策がぶれない条例の意義、
「条例を育てる」というお言葉どおり、条例に基づく各種試行錯誤について述べてくださったことも印象的でした。

各自治体に自前の条例があり、自治体ごとその条例に沿った施策実施を考えていく意義を再確認できました。

◆その後、同和問題に対する運動としてはじまった公益社団法人子ども情報研究センターに移動し、
設立時から現在にいたるまで、大阪府での子どもの権利を取り巻く政治・社会状況や、
子どもの権利とその実践や課題についておはなしを伺いました。

例えば、泉南市では、政治理念が異なる市長交替があった際も、条例があるからいまの仕組みが継続されているとのこと。
つくづく条例制定の意義は大きいです。

また印象的であったのは、子どもオンブズについて述べられた見解です。
「教育相談があるのに、なぜオンブズが必要なのか」という考えがいまだあるようですが、
子どもとの信頼関係を第一に、子どもの願いを聞き、どうするか一緒に考えるオンブズでなければ、
子ども不在で大人同士のやりとりとなり、子どもの意見表明・参加がないため現状からどんどん離れてしまう可能性がある、つまりは子どもの最善の利益を守れない。

泉南市でも子どもの申し立てやオンブズについて検討をはじめているとのことですが、
第三者の救済機関は必要だと改めて思いました。

なぜ条例が必要なのか。
子どもにやさしいまちにするための仕組みはなにか。
考える半日となりました。

ご関係者の皆様には、どうもありがとうございました。