2025年3月:一般会計予算にかかる賛成討論

本会議最終日、一般会計に賛成はするものの意見は伝えねばと、みらいネットワーク会派で以下討論に臨みました。

日程第5議案第8号令和7年度昭島市一般会計予算について、みらいネットワーク会派を代表し、意見を交えながら賛成の立場で討論致します。

冒頭、東日本大震災による2万2228人の関連死含む死者・行方不明者に対し、謹んで哀悼の意を表します。14年が経過した今なお、福島第一原子力発電所、略して福島第一原発の事故後、放射線量が高い帰還困難区域は県内に7市町村あり、2月1日時点で約2万8千人もの避難者がおられる状況です。原発の事故処理についても、処理水による影響を受ける漁業者、除染土への対応等、課題は山積しており、当事者の方々はいかにやるせない想いでいらっしゃることでしょうか。
また、福島第一原発以外の国内の原発については、現時点で18基が廃炉を決めており、今月には浜岡原子力発電所での廃止措置が始まりました。2基の廃炉完了時期は2042年度、廃炉費用は1号機約379億円、2号機は約462億円見込みですが、大量の放射性廃棄物の処分先は決まっていません。また、放射性廃棄物の監視が長いもので数百年程度要することもあり、各地の廃炉計画の延期が続きます。
一方、国においては2022年のGX実行会議において原発政策の大転換をはかり、2023年には60年を超えた原発の運転が可能となる「GX脱炭素電源法」も成立、本年6月6日から施行されますが、過去から学ばない政治判断には非常に落胆しました。
また、本年2月に閣議決定された第7次エネルギ-基本計画では、原発事故後の「再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減する」との方針を削除し、原発回帰を明確に打ち出しています。特に、計画で示されるデータセンターによる電力需要増については、何ら規制を設けない国の施策の影響を受けているのがまさに我が市ではないでしょうか。環境影響の公開と対策や総量規制の検討など、持続可能なデジタル社会の形成を、まずは目指すべきです。そのような中で、市においては先日の建設環境委員会にて気候変動対策強化を求める陳情が全会一致で採択されたことは希望です。
さて、昭島市次年度予算については、市長の施政方針演説、教育長の教育施策推進の基本的な考え方、代表質問、一般質問、予算要望への回答、各委員会における質疑などを参考に、慎重に検討させて頂きました。みらいネットワーク会派としては、予算には賛成するもののいくつかの意見を述べさせていただきます。
本年で終戦から80年を迎えますが、各地での紛争が絶えず人々の命が突如奪われる事態を決して許してはならず、人間が安心して生存する大前提である世界平和の実現に向け、歴史から学びながらのたゆまぬ努力が欠かせません。今月、核兵器のない世界をめざす核兵器禁止条約の第3回締約国会議が開催され、核抑止論を「全ての人の生存を脅かす核の危険性の存在を前提にしている」として否定し、「核廃絶は単なる願望ではなく、世界の安全保障と人類の生存に必要」とする政治宣言が採択されました。また、日本原水爆被害者団体協議会のノーベル平和賞受賞を祝いつつ、「地政学的に不確実な時代、国際法と多国間協力が損なわれている」との危機感も表明されました。日本は核兵器禁止条約に署名・批准しておらず、締約国会議も3回連続でオブザーバー参加すら見送るなかで、本市が加盟する平和首長会議を通じた日本のオブザーバー参加の要請を高く評価します。世界情勢が危機的な今こそ、世界唯一の被爆国日本は核保有国と非核保有国の橋渡しに努め、核廃絶の実現に向けた主導的役割を果たすべきです。
さらに、米軍横田基地に隣接する自治体として、日米合同委員会合意事項は、オスプレイの飛行運用限らず、最低限守られるべきであり、国及び米側に対し、粘り強く要請を重ねて頂きたいと意見します。昨年11月29日横田基地所属のオスプレイが墜落し、8名の搭乗員全員が死亡しました。構造的な欠陥ともいうべきギア破断の根本的な原因も特定されないまま、一時的な飛行中止ののち、現在は危険飛行を続けています。合理的安全性が保証されるまで国に飛行中止を求めるべきです。また、横田基地上空高度からのパラシュート・パラグライダーによる危険な降下訓練の常態化に、周辺住民は不安や強い危機感を抱いています。どんなに万全を期しても突風の強風等での誤投下を防ぐことはできず、人口密集地での降下訓練は横田基地では行わないよう国に強く求めるべきです。
また、繰り返し質問してきましたが、横田基地周辺自治体のPFAS汚染問題は横田基地に起因するとされています。日米地位協定環境補足協定に基づき基地内の土壌水質検査を行い公表すべきです。さらに、PFAS対策の大前提として、細かな実態把握が欠かせません。市の全所有井戸の検査に加え、深度ごとに細かな実態把握をするための観測用井戸設置を検討頂きたいと意見します。
次に、過去最大規模の予算になっていますが、行財政全般を担うのは職員であり、住民の福祉の向上、サービス向上に日々取り組まれています。市長も職員の経験者として常に「職員は市民の宝」と公言していますが、行政運営はまさに市長、管理職側と職員側との車の両輪関係で遂行されていると確信します。職員ひとり一人が仕事に誇りと自信を持って働くことができる職場環境改善は必至と考えます。職員・会計年度任用職員の処遇改善や賃金アップを高く評価しますが、これらは職員労働組合の活動が基本にあり、人事院勧告に基づき実現されたものと捉えています。ワークライフバランスの実現やメンタルヘルス改善問題など、みらいネットワークは繰り返し訴え続けていますが、大きく改善されたとは思われません。職員の業務や上下関係、人事に対する不信の声もあります。若年退職者の多さも、スキルアップだけが理由でないのではとの懸念があります。どのような業務の問題でも気軽に相談できる、真剣に応じてくれることで構築される信頼関係が、市民サービスも向上させると意見します。また、快適な職場環境の改善・整備のためには、労働安全衛生委員会の運用は欠かせません。市民から信頼される市政運営のため、これまで以上に市長管理職側と職員労働組合の連携の必要性を訴え意見とします。
次に、子どもの権利の実践については、本年度子ども未来会議と子ども・若者未来会議開催、職員自ら子どもたちのいる場に足を運んで声を聴いた子ども・子育て支援事業計画策定、新畑公園整備を高く評価するとともに、今後の意見聴取や、施策反映に期待します。いじめ・不登校・自殺者数などから子どもの生きづらさが痛いほど伝わってきます。また、ヤングケアラーは、早急な実態把握をすべきです。生きている実感をもてる、肯定感が高まるような子ども参加の実践がますます求められる状況と捉えています。また、子どもの権利に根ざした居場所の拡充も必要であり、保育園、学童クラブ、児童館、放課後子ども教室等々既存の居場所の量と質の充実をはかるべきと意見します。また、選択肢の拡充については、移動児童館実施の検討と、適宜検証しながらの小学校早朝見守り事業実施に期待します。全ての施策に対し、部署連携して子どもの最善の利益の横串をいれる必要があり、そのためにもかねてからみらいネットワークが求める子どもの権利条例が必要です。
次に、医療的ケア児コーディネーターについては、早急な配置に向けた取り組みに期待します。
次に、学校教育について、中学校の部活動は、スポーツ・文化活動をしながら、連帯感、責任感や自己肯定感も育める重要な活動であり、保障すべきです。部活動地域連携・地域移行事業については、「地域の子どもたちを地域で育てる」という理念には賛同しますが、経済負担から体験格差を生じさせず、広範囲の移動にも留意すべきと意見します。
学校給食の役割がますます肝要な状況での学校給食代替費補助に対し、該当する保護者からお喜びの声が届いています。公平性の観点からの施策の拡充を評価します。
また、人権教育も一層重要ですが、ジェンダー平等、多様性など人権について幅広く学べる包括的性教育が有効です。この数年で性教育テーマの教育懇談会が2度開催され、各校PTA主催の企画も増加しており、保護者ニーズは確実に高まっています。子ども期からインターネットからの情報収集が容易で犯罪も多発する時代において、インターネットリテラシーの観点からも重要であり、教育委員会として各校の包括的性教育の実施を強く後押し頂きたいと意見します。
子どもたちの学び場の環境整備も必要です。避難所にもなる体育館や校舎の断熱は優先的に対応すべきであり、光華小大規模改造工事における断熱の検討を評価します。またインクルーシブの視点からの環境整備も、随時当事者の声を聞きながら検討すべきと意見します。
次に、学校公開時に防災体験や、避難所運営委員会の避難訓練を実施した学校がありました。訓練に参加できないご家庭にとって非常に有意義であり、可能な学校があれば取り組むべきです。また、コミュニティあっての防災対策ですが、自治会、地区委員会、PTAや子ども会など既存のコミュニティがなり手不足で存続の危機に直面する状況を考えても、地域学校協働本部の整備を早急に検討頂きたいと意見します。
さらには既存のコミュニティの維持・再編のみでなく、生活支援コーディネーター・地域福祉コーディネーターはじめとする社会福祉協議会によるネットワーク、各地域包括支援センターによるネットワークや新たなコミュニティなど有機的に繋げるには、昭島市地域コミュニティ活動連携推進計画が要になります。庁内連携・市民協働で実行すべきと意見します。地域の支え合いの仕組みをつくる点では、障害及び介護職員研修費等補助も重要であり評価します。さらなる人材確保に繋げて頂きたいと意見します。このような局面での公民館及び保健福祉センターの改修工事中には、市民活動が縮小しないよう庁内外連携して取り組み頂きたいと意見します。
次に、HPVワクチンについて男性の任意接種が始まりますが、国の疾病・障害認定審査会、感染症・予防接種審査分科会では、本年にはいってもHPVワクチンの請求認定がおりています。健康被害の状況は必ず注視の上、適宜市として必要な対応を講じるべきと意見します。
最後に、GLP昭島プロジェクトも踏まえた公害調査・測定等経費を評価します。一方、同プロジェクトについては、法令の範囲内の開発とはいえ、市内外の住民の暮らしや生き物、自然環境・地球環境に及ぼす影響があまりに甚大です。
交通課題については、発生交通量、通行ルートやピーク時間帯に対する懸念をどれだけ伝えても根本的な変更は一切なく、対話というにはほど遠い状況に市民は途方に暮れています。市民の安全安心と命を守るという役割を担う行政への期待はますます大きくなっており、あらゆる手段を講じた交通安全確保策を粘り強く求めるべきです。また、事業者が評価書でいう、市内学校に対する計画の説明と独自のヒヤリハットマップ作成は、全校に対し実施されるべきであり、市もフォローすべきと意見します。
まちのありようを一変させうる環境影響についても、多岐にわたり懸念が残るにも関わらず、根本的な計画変更がないまま3月7日に東京都環境影響評価制度、略して、「環境アセス」上の評価書が拙速に公示されたことを大変憂慮しています。評価書案に対する各所からの指摘を踏まえ、専門家の助言等踏まえた信頼に値する評価と対策であるのか、そもそもあるべき環境保全について市や市民と共通見解を持てているのか大きな疑問が残ります。また、事業者との個別協議が始まったばかり、各所での協議で合意をみいだせないタイミングでの公示であることも、市民の大きな不信感を招いており、協議とは形だけで不誠実だと受け止める市民すらいる状況です。
また、3月10日からは玉川上水南側地区等の「都市計画」案に関する図書の縦覧・意見提出が始まりました。大きな局面を迎えて市民の緊張が高まり、何よりも協議が必要とされるこの時期に、市民からの反対意見もよそに公園整備予定地開放に取り組む企業姿勢は大変大きな問題であり、環境アセスでも縷々指摘された市民との信頼関係の構築を足下から揺るがしています。
まちづくりに市民参加を保障する仕組みがないことが大きな課題として一層浮き彫りになるなかで、いまにいたるまでの教訓を活かし、自分たちの手で地域をよくする民主的活動の機会を担保するためにもまちづくり条例制定を強く求めます。
また、市においては、他自治体と連携しての都への各種要請や国への法整備の働きかけと並行して、常に市民の側にたちながら、これまで事業者に意見してきたひとつひとつの懸念に対し真摯な対応を求め、入居予定のテナント含めた対策を、確実に実行させる必要があります。
今後市と事業者が締結予定の協定では、環境アセスに基づき行われる評価・事後調査や、市が懸念する周辺箇所への影響の対策を求めていくとの答弁がありましたが、「排熱」など環境アセスの対象外となる課題含めた全ての懸念事項について、具体的対策を盛り込んだ協定を締結し遵守を求めるべきです。
また、そもそもの懸念について、共通理解がない可能性もあります。市民との直接協議を通じて共通認識を確実にもつことで再スタートをはかる必要があります。まちづくり条例がない状況では、近隣住民、事業者、行政との協議会をできる限り早期に設置し、市も同席するなかであらゆる懸念を対象に協議をし、その具体的対策を協定に含めるべきです。さらに、協議体に参加予定の近隣住民は、自治会・PTA・同開発について積極的に動いている市民団体のメンバーなど、多様な構成からなり、全ての情報公開を求めます。
以上、何点かの意見を述べさせて頂きましたが、市民はまちづくりの主人公であり強力なパートナーでもあります。今こそ、徹底した情報公開を基本に市民参加・市民協働を実践するまちづくり条例を制定し、将来世代から見据えたまちを市民とともにつくりあげるべきと重ねて申し上げて、本予算に対する賛成討論といたします。