討論「未成年者への新型コロナワクチン接種について保護者への情報提供及び新型コロナワクチン接種の有無からの差別をしないことを求める陳情」について

本日で、12月議会が終了しました。

厚生文教委員会で審査された陳情に対し、委員長報告に対して以下の通り反対討論をしました。

日程 第6号 陳情第13号「未成年者への新型コロナワクチン接種について保護者への情報提供及び新型コロナワクチン接種の有無からの差別をしないことを求める陳情」について、不採択とする委員長報告に対し、みらいネットワークを代表して反対の立場で討論いたします。

世界的な新型コロナウイルス感染症流行に伴い、各国では事態の収束をはかる切り札としてワクチン接種を強力に推し進めています。日本においては、接種率は高い一方、特に若年接種については、判断に悩む保護者が多い状況であることは、日本トレンドリサーチが5歳から11歳の新型コロナワクチン接種について、11月19日から25日に実施したアンケート調査結果からも分かります。回答者の46.3%が、「接種させたくない」と回答し、理由としては、副反応が心配という声が多く挙げられていました。

また、「接種させたい」回答理由としては、「打たないことで差別につながるかもしれない」「今後行動を制限されたらかわいそう」「本人が意欲的だから。接種後の休みを期待している」など、消極的理由から検討している意見も挙がっていました。

これまで、1日も早く接種をと切実に希望する方々から、副反応や差別を懸念する方々まで、非常に多岐にわたる相談が寄せられてきました。接種有無の選択は違っても、自分や周囲を守りたい気持ちはどちらも同じであり、選択結果を尊重し寄り添って対応してまいりました。一方、リスクとベネフィットの情報量に差がある方々や、周りの目を気にしたり同調圧力を感じ接種を決める方々は一定数おり、どちらの情報も偏りなく市民に届ける必要性や、周りに左右されず自分の意思で接種判断できる環境を担保する必要性を強く実感しました。

今回の討論に当たり、陳情者の述べる、国が公表する罹患状況と副反応疑い報告について10代に焦点をあて確認しました。

まず、罹患状況については、厚生労働省の12月7日付「新型コロナウイルス感染症の国内発生動向(速報値)」によると、死亡者数 18,362 人のうち 60 代以上が全年齢9 割以上を占めており、10 代の死亡者数は3名でした。また30代未満の致死率および重症者割合はどちらも 0.0%との公表でした。

次に、 12月 3 日に開催された第 73 回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会では、副反応疑い報告数29,453件、重篤報告数5,949件、死亡報告数1,060 件。うち、医療機関から「関連あり」として報告された副反応疑い報告数 17,255件、重篤報告数2,874件、死亡報告数94件が公表されていました。

また、年齢別報告件数によると10 代の副反応疑い報告数 1,408件、重篤報告数296件、死亡報告数5件です。現状、10代については先ほどの新型コロナウイルス感染症に罹患した重症者数0件、死亡者数3件より、副反応疑いの報告件数のほうが多いことが分かりました。あわせて、9日の厚生労働省審査分科会では、新型コロナウイルスワクチン接種後の健康被害の救済認定が計290人となったことも分かりました。

これらの公表は、あくまで現時点の集計であり、また、それぞれの報告数について多いと捉えるか、少ないと捉えるかの解釈も個々人で異なるはずとはいえ、接種判断に当たって重要な情報であることは間違いありません。

そもそもファイザー製ワクチン添付文書には「本剤は、本邦で特例承認されたものであり、承認時において長期安定性等に係る情報は限られているため、製造販売後も引き続き情報を収集中である」と記載されており、新型コロナワクチンの長期的な影響について、確たることは誰にも分かりません。そのため、私たちは、適宜更新される情報にはキャッチアップする必要があるのです。しかし、市民が各自でキャッチアップすることは決して容易ではなく、自治体は継続して何度でもこれらの情報を届ける努力をするべきです。

次に、リスクとベネフィットに関する情報にアクセスできる環境整備とあわせて、私たちが細心の注意を払うべきは、接種することでリスクを回避したり安心したい考えを尊重すると同時に、副反応疑いを懸念したり体質から接種ができないケースも尊重する姿勢を貫くことです。なぜなら、打つ、打たない、双方を認めなければ、必ずどちらかへの圧力や差別・分断が生じるからです。

本年5月・10月に日本弁護士連合会が実施した「新型コロナウイルスワクチン予防接種に係る人権・差別問題ホットライン」には、ワクチン未接種が原因で、職場や学校などで不利益な取り扱いを受けたとの相談が数多く寄せられました。残念ながら、各地で接種、未接種間での差別が生じている状況であり、今後接種機会が増えるほどその差別が深まる危険があります。

自治体として、強いメッセージの発信とあわせて、学校や職場でゆめゆめ差別なきよう周知徹底をはかり更なる注意喚起をするなど、具体的な取り組みも必要です。

予防接種法及び検疫法の一部を改正する法律案に対する附帯決議で「接種するかしないかは国民自らの意思に委ねられるものであることを周知する」、また、「新型コロナウイルスワクチンを接種していない者に対して、差別、いじめ、職場や学校等における不利益取扱い等は決して許されるものではないことを広報等により周知徹底するなど必要な対応を行う」とされています。これが、私たちが常に立ち戻るべき原点です。

今回、審査のなかで、今後若年も重症化しやすい変異株がでる可能性がある、行政として若年は重症化しづらいという罹患状況を伝えるのは違和感があるという意見がありました。しかし、今回の感染症もワクチンも、いずれも未知のもので前例がありません。このような状況下では、状況の変化・時間の経過とともに判明するリスクとベネフィット双方について、偏りない情報提供につとめることが、自治体として最低限すべき情報公開であり、リスクコミュニケーションの基本と考えます。

また、子ども自身は受けたいものの、保護者が心配をして受けたさせたくないケースを懸念する意見がありました。しかし、先ほど申した日本トレンドリサーチの調査結果のような、差別を気にかけ接種したい、接種後の休みを期待して接種したいという子どもたちの意見は、実際身近でも聞きました。様々な情報を収集し、的確な判断をできるのは、今回の場合保護者であり、それも踏まえて16歳未満は保護者の同意が必要との措置であるはずです。今後5歳以上と接種対象年齢の引き下げもあるところ、子どもの打ちたい気持ちを最優先する考えは新型コロナワクチン接種についてはむしろ避けるべきです。

私たちが若年接種に対し留意すべきは、子どもが周りの差別が怖い、同調圧力を感じて打ちたい、こうしたことを理由として接種を希望する状態にならないよう努めることではないでしょうか。

最後に、今後、3回目接種、更には接種対象年齢引き下げも控えるところ、これまで以上に充分な情報提供、差別を気にせず自由選択できる環境を担保しない限り、真の任意接種となり得ません。

市がすでに一定の取り組みをしているからよしとするのではなく、市議会としてさらに何ができるのか議論を深めるべきで、市議会の人権意識が問われています。

10代のワクチン接種率は高いものの、身近にはこれでよいのかと悩みながら接種した方が多い状況でした。今回陳情は、そうした状況に危機感を持つ市民の1人からなされたものと理解しています。

今回の陳情を採択し、市民に寄り添いながら、よりよい情報提供の在り方、差別のない社会を模索することは、誰もが安心して暮らしやすい昭島に確実に繋がります。市議会と市と一体となってさらに取り組みを継続、強化すべきとして、反対の討論とさせて頂きます。