「都市農業と学校給食」講演会に参加しました

生活クラブ生協の食と農を考えるフォーラム
2022「都市農業と学校給食~東京の農業を持続可能なものにするために、今私たちができること~」に参加。

まず、澤登早苗さん(恵泉女学園大学 教授、日本有機農業学会理事、多摩市農業委員)による「都市農業の可能性」の基調講演がありました。

2021年3月策定の第4次食育推進基本計画では
学校給食の地場産利用推進や持続可能な農業生産について述べられています。
しかし、実際に出口がないと生産ができないため、農林水産省は現在助成金もだし、学校給食と有機の親和性が急激に高くなっています。

また、都市農業と都市農地をめぐる政策については、
2015年都市農業振興基本法策定以降、農地は「宅地化すべきもの」から「あるべきもの、残すべきもの」へと
その位置づけが大きく転換。

この背景には、都市農地は、農業生産のみではなく、
都市生活者が生活するための多様な機能(都市進行基本法第3条1項に示されるような、新鮮な農産物の供給、農業体験・学習・交流の場、災害時の防災空間、良好な景観の形成、国土・環境の保全、都市住民の農業への理解の醸成等)を持つことへの注目があるのですが、
一方、あくまで農業者による農業継続の支援の特徴があり、いまだ地域にとって必要という視点が弱く、
相続などに関する課題は未解決のままです。

都市農業を守るために、例えば以下のような政策が考えられます。
◆有機農業・環境保全型農業の推進
◆直売所・ファーマーズマーケットの設置の推進
◆学校給食への地場農産物の導入
◆低農薬・無農薬を前提とした農業体験農園・特色ある市民農園
◆援農ボランティア等人を育てる
◆緑農地制度の創設
◆有機栽培や自然栽培など新規就農者の個性を尊重し(敢えて草を生やしたり土を耕さない等の自然栽培もあるところ農業ができるよう担保)、市街化区域内農地の賃貸借を推進
◆食と農のまちづくり条例を制定し、それぞれの自治体で一定の土地を守る

特に、コロナ禍で家庭菜園に関心を持ったり、田園回帰を考え始める人が急増しています。
共に体験する社会性をもったコミュニティガーデンの視点で、有機の体験型農園を設置すれば、
意識や行動変革に繋がります。
実際、世界をみると、ソウル、カリフォルニア等
世界の大都市では有機農業の特性をいかし、コミュニティガーデン等の手法で貧困対策や福祉施策が展開されています。
(映画「エディブル・シティ」も紹介されていましたが、ぜひ機会あれば鑑賞ください!一人ひとりができることがあるのだと考えさせられる作品です。

都市を耕す エディブルシティ|cinemo

澤登先生も、多摩市の農家と恵泉女学園大学の協働で
2017年から小さな子どもから高齢者まで、自ら食べ物を作って食べる「誰でも畑・子ども食堂」のシステムづくりを目指し活動しているとのこと。
子どもに施すだけがよいこととは思っていない。
そのため、子どもと一緒に食べられるものをつくり、労働の対価としてご飯が食べられることを重視しているそうです。
また、貧困は体験の貧困も招くが、農業体験は人が生きる上で大切なもの。そうした場を都市農地でつくり実践をしているそうです。
落ち葉堆肥のための落ち葉をもって集まってくれればごはん券配布の取り組みもなさったようですが、思わず参加したくなる取り組みですね。

大人にとっても有機農業体験による健康増進効果があります。生きづらさを感じる人々が増加するところ、普段から土に触れ精神のメンテナンスができる食農体験は必要です。

都市農業問題は、その地域に暮らす住民の問題でもあるとの先生のお言葉でしたが、日野市等の自治体事例を通じて地域レベルで様々な創意工夫をできることが分かりました。
ここでは、「生活には農環境が絶対に必要」という事から全国に先駆け農業基本条例を制定し、都内でいち早く独自の仕組みをつくり、地元の野菜を学校給食に積極的に活用している日野市の事例を紹介します。

日野市では地域の子ども達に「農」と触れ合う機会を提供し、
学校の授業の中で「農業」を取り入れてもらい、自分たちで育て収穫したものを学校給食で食べてもらっています。

子ども達に「農」を理解してもらう為に、学校と先生、保護者の理解と協力を得て
播種から収穫までの「草取り」や「間引き」など大変な作業も含め、全てを経験します。
子ども達は 1 年間の農業体験を通じて、農業の大変さ、食料を大切にする気持ち、天候や自然環境を学びますが、この取組みにより、都市農業の理解者を増やし、子供たちから保護者、地域住民へと広がり「農の応援団」に繋がっています。

また、例えば、「子ども達に遺伝子組換えでない安全・安心な大豆で作った豆腐を食べさせてあげたい」という相談が栄養士や市民からあり、
調理員、栄養士、消費連絡運動会などの協力により、2000㎡の畑で日野産大豆プロジェクトを実施。
豆腐は小中学生約13000人で食べ、おからのだんご、味噌汁などをつくる。6年生は味噌造りをし、半年後の給食でつかう、余った大豆で納豆をつくるなど余すところなく活用したようです。
有機野菜を給食にという願いの人たちが、場所は貸すから復活させたいと、今年また久々に復活するそうです。

その他では、保育園、育成会、自治会等の収穫体験、中学校の職場体験、教員の初任者課題別研修、農業体験農園や福祉農園、菜の花摘み取り畑等、市民の方に憩いの場を提供し「魅力ある都市農業」が幅広く展開されています。

今後の課題として
① 基本を忘れず学校給食を無理せず長く続ける事(コミュニケーション)。これにより、例えば、野菜の大きさは違っても機械にはいればよい等行政が理解を示し、給食利用率向上にも繋がる。
② 仲間を増やし後継者およびコーディネーターの育成(リーダー育成)
③ 利用率アップ為の方策として給食生産圃場の拡大(有休農地活用)
④ 調理室を利用して地元農産物の加工品開発(トマトピューレ)
等挙げていらっしゃいました。

日野市のいずれの事例からも
都市農業者、行政、市民が連携をし、それぞれの力や知恵を出し合い
豊かな食体験や、持続可能な都市農業を模索していることが伝わってきましたが、
まずは、こうしたコミュニケーションをとれる関係性の構築が欠かせませんね。
日野市の学校給食の取り組みは、また機会を得て詳細を知りたいと思います。