スタンフォードオンラインハイスクール校長 星友啓さんの講演を聴きました
母校であるICU高校出身の教育関係者からなる、「教え人フォーラム」に参加。
スタンフォードオンラインハイスクール校長の星友啓さんの講演を聴きました。
(※先週末の朝日新聞「フロントランナー」でも星さんが取り上げられていました。
https://www.asahi.com/articles/DA3S15339915.html )
教育の目指す方向性は、世界的にも劇的に変化していることを実感。
大切な視点を実践例とあわせてしっかり言葉にして示してくださり、示唆に富んでいました。
人を育てる教育は、非常に重要であることはいうまでもありませんが、
一人ひとりがその人らしく幸せに生きていくために、教育があるべき。
従来大切にされた価値観からシフトすべき部分が多分にあることを改めて認識しました。
以下は備忘録です。
◆教育プログラム上、重視する点について
アメリカの48州、更には35~40カ国から生徒が集まる当校にて、以下4点を重視。
①感情的知性
周りの生徒と社会性を育んだり、問題が生じても忍耐強くむかう感情を、生き抜く力として、
スタンフォード大の心理学、教育学、脳科学も取り込みながら
自己理解、意思決定、人間関係、社会認識、自己統制を柱にしっかりとプログラムに反映。
アメリカではイエール大学での研究結果で社会性と感情の力を育むことは学力向上にも繋がるとされ、
自己理解、意思決定、人間関係、社会認識、自己統制が柱となるSEL (Social Emotional Learning 社会性と感情の学習)がトレンドとなり、科学的なカリキュラムも存在、実践する学校が多い。
一度学んだことを実践的に試せる環境を、学校のなかのプログラムにちりばめていく。
どうちりばめるかのポイントのひとつに、反転授業がある。
講義の部分は録画等で授業外でこなし、
授業のなかでは演習やディスカッションをベースにする。
先生からあるいは生徒同士のフィードバックをし、
「ここがいい」、「ここを変えよう」という具体的な理論を学びのなかで実践。
教師はどうファシリテートするかをトレーニングしていく。
②Design Your Learning 自分の学びをデザインする
大学卒業後も学んでいく(生涯学習)ことを視野にいれる。
また社会が急速に変化するところ、自分で自分の学び方を考えてゆかねばならない。
学校外での学びの選択肢も増え、学校へいけばそれで終わりという時代は終焉している。自分の人生のためにどのような学びをするのか考える時代に。
成績が悪いことについては、その才能にあったリソースがなかっただけという捉え方もできる。
皆が同じ教育をすることはある程度はよいが、選択肢が少なくなり、本来各自が違った目的や能力で生きているはずであるのに、生徒の持つ能力、才能にあわせて育てることができない。
学びのデザインの重要性のひとつは、自分の才能やモチベーションにあった学習の仕方をみつけていくことで、才能を回復すること。そのため、自分の才能やモチベーションにあった学習の仕方をみにつける練習を、生徒ができる環境をつくる。
具体的には、哲学が必修である以外は統一カリキュラムをつくらず、生徒が自分の興味や進路に応じてカリキュラムを決定。
ただし、単に自分で授業が選べる形にしてデザインする力が身につくと考えるのは楽観的。
心のケア(タイムマネジメントなど)やアカデミックアドバイザーなどサポート体制を整える。
人間同士で相性があわないときも複数人配置することで、子どもたちが必要なリソースを得られるようにするデザインする力を育む。
③ゲームチェンジ力
一番ハイライトしたいのは哲学。
物事の前提や根本的な価値観を問い直し、新たな視点や価値観を見出す。
④ウェルネス
心も体もよい状態にあり、良い人生を生み出す力。
ウェルネスには、経済、知性、仕事、社会性、身体、環境、スピリチャル、感情と様々な側面があるが
それぞれがよい状態になっていくウェルネスプログラムを
アメリカでは企業においても福利厚生として取り組みしており、
星さんの学校においてもプログラム化。
◆教育の未来について
今のトレンドは、
・テクノロジーも適宜組み合わせての個別最適化学習(生徒を枠にはめるのではなく生徒にあわせる)
・アクティブラーニング(生徒のエンゲージメントを高めて学習してもらう)
・EdTech(世界の大学生人口が2040年には約3倍に。校舎をたて教員を集めと既存のインフラづくりで対応することは難しい人口増加で、テクノロジーも駆使しながらの対応が求められる)
・分散型学習(学校内でのワンパッケージであった状況から、学外に様々な学習が分散しつつある)
こうしたトレンドを踏まえ、それぞれの役割も変化する。
学校は、理念を大切にしながら実践にうつしてゆかねばならない段階。
生徒は自らデザインする力が求められ、学校もその力を育むことをサポートするリソースを準備する。
先生はレクチャリングからコーチングが求められる比率が拡大してゆく
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