第1回『市議会議員がスウェーデンの主権者教育を学び、日本の学校や地域で活かし、社会的な課題に自由に意見や議論しやすい民主的な社会にしていくための研修会』に参加しました

地方議員で構成される「未来をソウゾウする政治プロジェクト」、

過去参加した企画「スウェーデンの主権者教育を日本でどう実践するか?」のご関係者、デモクラシー・ラボ(デモクラシー・ラボ (thebase.in) )共催の3回連続議員向け企画に参加しました。

(※過去参加した講座概要は以下です。

主権者教育について考えるオンライン企画に参加しました | 林まい子 (seikatsusha.me) )

 

1回目のテーマは、「スウェーデンの若者の投票率が85%の理由」

生涯学習的な要素、教育や、それらの根底にある人権意識等について

( 独 )国立青少年教育振興機構青少年研究センター研究員の両角達平さんがレクチャーしてくださいました。

◆まず、スウエーデンについての国際的な評価は、例えば、

・2020年SDGs達成度1位(国連持続可能な開発ソリューション・ネットワーク)、

・2020年汚職認知指数3位(トランスペアレンシー・インターナショナル)

・2020年民主主義指標3位(エコノミスト)

・2020年ジェンダー・ギャップ指数4位(世界経済フォーラム)

・2017年世界若者幸福度調査1位(国際若者基金)。

こうした社会をどのように実現しているのか
若者の社会参加の視点からみると、
投票するのが当たり前で、社会参加も当たり前。

選挙権・被選挙権は国政地方選も18歳で、18~24歳の国会議員は2014年時で2.3%、25~29歳は8.3%と、
実際に若者が国をつくっているとのお話が冒頭ありました(ちなみに、市議会と県議会ではボランティアで給与はでず、手当のみで、市民感覚を忘れようがないそうです。国会議員もフルタイムで給与がでるが、月収約80万円。)

◆スウエーデンの若者が置かれる環境の特徴ですが、
高校卒業後すぐに大学進学する若者は13.7% のみ 。

最終的に就職をするのは30歳ごろで、自由に過ごすこの時期に自分がやりたいことを探し、その上でどんな人生を送るか決めるが、自由な人生を歩めるこの移行期に、様々な選択肢が保障されているそうです。

 

つまり、選択肢があり、各人に決定権がある。

 

例えば、選択肢の一つとしてあげられていたのは、若者団体です。

どのようなものかというと、非営利であり若者中心の団体で、若者にとって出会い・交流の場となるプラットフォームとなり、また自己を変え、日々をよりよいものとするもの。
市民社会にとって重要との位置づけでした。

 

スウエーデンでは若い世代の7割程度が若者団体、2割程度がユースセンターで活動しており、
学校だけではなく、地域で自由に活動できる状況にあり、
これを民主的にすすめることで民主主義を強固にするとの考えでした。

 

・例えば、具体的な若者団体として、地域で若者の影響力を高めるための若者協議会があります。
公的に、12~17歳で構成される協議会が毎年予算350万円を使う事例も紹介されていました。

 

・他にも政党青年部があります。

政治家になるためではなく、政党のイデオロギーに賛同して何か活動したい人が所属するもので、
本部の若者政策を若返らせる役割を担い、
それで国の法律が変わったり、18歳で政治家になる若者もいるそうです。

 

次に、学校においてはどのように民主主義を教えているのか。

 

まず、スウエーデンの教育法として、

「○子ども・生徒には、教育に対して影響力が発揮できるようにしなければならない。

○子ども・生徒は、教育の改善のために積極的な参画が促進され、彼ら自身にかかわるあらゆる事柄については、常に情報が与えられなければらならない。

○子ども・生徒への情報提供と影響力のあり方は、年齢と発達に応じたものとする。

○生徒は、教育に対しての影響力という文脈において、生徒に関わる事柄を主導できなければならない。

○生徒の権利に関わる組織活動も同様に促進されなければならない 。 」

 

つまり、「自分の学びの主体は自分であり、学校は「小さな社会」であるので、学習や学校に対して影響力をもつ」という考えがあるそうです。

 

実践例としては、以下が挙げられていました。

クラス会議

学期の始まりに代表を選挙で決め、自分たちの好きなこと、変えたいと思うことについて話し合い、ときにカリキュラムを変えてもらうこともある。

 

生徒会

クラス単位でなく、学校全体のことを議論する。

扱うトピックは多岐にわたっており、

  • 全校活動のテーマ
  • 学校・教室に必要な物品の購入・補修の依頼
  • 学校への持ち物や規則
  • 修学旅行の資金集め
  • 日程調整
  • 学校の方針 等

 

総意を校長に伝えて、学校方針にまで影響を与えるのは、まさしく、スウエーデンでの教育法の実践であり、クラス会議とも自分の声が必要とされていると実感する機会になります。

 

学校選挙

投票率アップに大きな影響力をもち、生徒会が実施。

日本では架空の政党設定が多いが、スウエーデンでは本物の投票先をつかい、すでに議席をもつ政党に投票する。
政党を招いた政党ディベート大会も推奨されており、公平性保てないからそうした会をやめるというのは、逆にやめるという考えであるそうです。

 

選挙小屋(政党ごとのブースが商店街や駅前や広場などに設置され、演説をしたり住民と政策について話す場)

アンケートなどが、生徒や児童の宿題の対象となることもある。

 

◆次に、ユースセンター・余暇センター(交流、出会いの場で、13~25歳が対象であり、 10~20%の若者が利用)がある。

 

特徴は、誰でも自由にこれる開放性、自由にできること、無目的であること。

 

13~25歳の年齢層に対し、自分が特段の目的なく自由でいれることを担保する場があることは、ことスウエーデンの高校卒業後の移行期を考えると非常に重要ですが、そもそもスウエーデンでは社会的に余暇の位置づけが高いそうです。

 

◆以上、スウエーデンの若者政策を総括すると、

理念:若者の社会への影響力を高める。

 

目標:13歳から25歳のすべての若者が、良質な生活環境に恵まれ、自身の人生を形作る力を持ち、コミュニティの発展に影響力を持てるようになる。

 

特徴
・若者の社会に影響を与える参画の機会をつくり、結果としての「影響力」を目標に

・「若者は社会の問題ではなく社会のリソース(資源)」という若者観

・法律をつくり資源を投入する。若者団体への助成金が目玉政策

・約30億円の助成金を106の子ども・若者団体に拠出(2014)

・若者団体と若者政策を作ること

 

結果として、若者の投票率も85%となる。

 

実際に、差別禁止法があり、あらゆる人(年齢・ジェンダー・国籍・エスニシティ・身体障害・思想信条)の考えが尊重され、また参画できる社会を実現しており、

上記に書いたように、自由な人生を歩める移行期の選択肢の保障(社会的な余暇の保障、市民社会への投資)をしたりと

社会への影響力を高める「若者政策」を整備しているのです。

 

◆では、実際、日本で地域の大人や市民はどのように関わるかというと、まず若者を変えてあげようという思い込みをなくす。

また、民主主義を理解し、人権意識が土台にあることが大前提で、これがないなかで仕組みをつくってもしょうがないとしつつ、以下を提案なさっていました。

 

自発的な結社をつくり日常的に活動をする。

(趣味でも勉強会でも地域活動でもどのようなジャンルでもよいので、自由意志に基づいた活動を民主的におこなっていく。大概の人は選挙のときに突然、政治活動などしないところ、まず大人が社会参画をする。)

 

子ども・若者だけの余暇の時間・空間を増やす。

(余暇とは、義務的な時間からの開放であり、真の自発性・主体性を発揮できる。大人の監視下にない居場所を増やす。

アプローチは様々であるが、こどもが自分たちで決められて、影響力をもてれば、結果的に主権者教育になる。日本では、まず余暇の時間を増やす必要がある。)

 

社会への影響力が発揮できているかを気にする。

(啓発のアプローチの限界(主権者教育、選挙啓発のアプローチには限界があるが、

意見・活動を受け止められられ、何かが変わるにしろ変わらないにしろ、フィードバックをする。)

 

◆スウエーデンでの実践を、日本というインフラにどのように試行できる可能性があるのかというテクニカルなことに関心がいっていたものの、

今回参加をし、まずもって必要なことはそれ以前の問題(子ども・若者関わらず、大人も含めた民主主義の理解や人権意識の醸成、自分が主体的に過ごせる時間・余裕の確保)であることを認識しました。

 

また、例えば、最近「校則見直しを通じて主権者教育を」という実践が各所の学校でなされるところです。

自身も、これまで当然にあったルールを見直す必要性(一部のルールが人権意識を欠く内容であることも当たり前にあると思うので人権意識醸成も兼ね)と

その作業を通じての周囲との合意形成など得られるものが多いのではとの受け止め方であったのですが、

レクチャー後の質疑応答では、校則見直しについては、見直し後の懸念(新しいルールに縛られすぎないようにする等)等もお話くだいました。

見直しを目的とするのではなく、あくまでそれは手段であり、長い目でどのように校則に関わるかの関係者間の共通理解の重要性を認識しました。

以前、日本各地での校則見直しの実践例紹介の企画に参加した際に、見直し後の学校事例も紹介されており、校則を変えたからよい、ではなく、その後も支障ないか関わり続ける学校も実際あるはずではあるのですが
「トレンドだから見直しをしよう」は手段が目的化し違うことを改めて認識しました。

次回の主権者教育の講座は講師も変わり、来週実施です。
今回の講座とともに消化し、今後の市への提言に活かしたい。

※両角さん執筆の、以下の報告書も紹介してくださっていました。ご興味ある方はご一読ください。

【報告書】高校生の社会参加に関する意識調査 (niye.go.jp)