討論:訪問介護報酬引き下げ撤回と介護報酬引き上げの再改定を早急に行うことを国に求める意見書提出の陳情

先日の厚生文教委員会では陳情審査が2件ありました。
(①訪問介護報酬引き下げ撤回と介護報酬引き上げの再改定を早急に行うことを国に求める意見書提出の陳情
②最高裁判決に基づきすべての生活保護利用者に対する速やかな損害回復措置の実現を求める意見書」の採択に関する陳情)

委員会では、多数決で不採択。

みらいネットワーク会派では、
青山秀雄議員が生活保護の陳情について
私は訪問介護の陳情について
それぞれ賛成の立場から本日の本会議で討論をしました。

最終的に本会議の場で不採択となりました。残念です。

↓以下、訪問介護の陳情に関する討論

日程第24 陳情第4号 訪問介護報酬引き下げ撤回と介護報酬引き上げの再改定を早急に行うことを国に求める意見書提出の陳情の委員長報告に対し、みらいネットワーク会派を代表し、反対の立場で討論を行います。

高齢者・要介護者数の増加に伴い、訪問介護の事業所数は年々増加しています。しかし、サービス付き高齢者向け住宅や住宅型有料老人ホームで契約・利用がしやすいよう、同じ建物内への訪問介護事業所併設による増加が実情としてあるとも指摘されています。また、事業所数増とは裏腹に、訪問介護員の有効求人倍率は、10年以上異常な高さが続いており、2013年の約3倍から2019年以降は約15倍と全く人がこない状況といわれています。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によれば、全産業の平均給与額に比べ、介護職員の給与の格差は直近では月8.3万円です。

介護職の高齢化も問題視されていますが、昭島市内の状況も例外ではなく、2023年昭島市障害者(児)福祉ネットワークとの議員懇談会で示された昭島市内11介護事業所のアンケート回答結果によれば、非常勤職員212人の年齢分布は、60~80歳代で5割を超え、50歳代以上までふくめると全体の8割とのことでした。

昨年の7月から10月に、東京・生活者ネットワークとNPO法人市民シンクタンクひと・まち社が58訪問介護事業所の運営に関する実態調査を実施しましたが、訪問介護の事業運営で最も苦労するのは人材不足で91.4%との回答があり、その結果、利用者からの依頼をすべて受けられない事業所は75.8%にも及んでいました。昨年度の訪問介護の基本報酬引き下げについては、処遇改善加算があると国はいいますが、この度の調査結果からは、何種類かある処遇改善加算のうち比較的簡単にとれる種類の申請が多く、これでは基本報酬引き下げを吸収できる水準にないことも分かりました。そもそも、申請手続きの負担が大きいという声があり、現場の負担を強いるようでは引き下げの解決策になっているとは到底いえません。「「食事と介護があれば、地域で最後まで暮らせる」と立ち上げたサービスを手放すのは苦渋の決断である」、「ヘルパーの地位向上と基本報酬アップが実現しなければ、あと10年で訪問介護事業はたち行かなくなる」などの自由意見もあり、待ったなしの危機的な状況であることを、再確認する結果となりました。

また、本年1月から6月に株式会社東京商工リサーチが実施した「訪問介護事業者」の倒産動向調査によると、倒産件数は全国で45件、前年同期比12.5%増で2年連続過去最多を更新し、さらに小規模事業者から、中小・中堅事業者に倒産が広がってきた結果となりました。同社からは「自力での経営改善には限界を抱えており、高齢化が進む中で国や自治体の支援強化が必要」との見解が示されています。

このように現場は過酷な状況ですが、地方自治体の受け止めはどのようでしょうか。共同通信社がこの6、7月に、全国の都道府県知事と市区町村長にアンケートを実施したところ96%の回答率であり、現場の人手不足や高齢化に伴う介護給付費の膨張を理由に、介護保険サービスの提供体制の持続に危機感を抱く首長は97%の回答結果となりました。また、昨年の基本報酬引き下げを「理解できない」「どちらかといえば理解できない」とした回答は計75%にのぼり、制度の持続性向上策として、「賃上げを進め人材確保」をあげた回答は多く、さらに、高齢者数がほぼピークとなる2040年ごろの介護提供体制の見通しは「介護需要は増加する一方、事業所存続や人手確保が厳しく、不安定になる」との回答が54%と半数を超えています。

地方自治体も大きな危機感を抱いており状況改善が待ったなしの状況ですが、令和7年版高齢社会白書によれば、2040年には、65歳以上の一人暮らしが女性の28.3%、男性の24.2%、65歳以上の認知症は14.9%、軽度認知障害は15.6%と示されており、今後需要がますます高まることは明らかです。国の第9期介護保険事業計画では、介護職員は2026年度までに約25万人増やす必要があるともされるなかで、一刻も早く手を打つ必要があります。

訪問介護は、住み慣れた自宅で暮らし続ける選択をできるようにするために必要不可欠です。家族の負担を軽減し、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みとして創設された介護保険制度が決して崩壊しないよう、介護報酬引き上げをしながら、介護の担い手が安心して誇りをもちながら仕事に携われるような対策をはじめとした各種対応が急務です。地方自治体ごとの対応には限界があり、国への意見を求めるこの陳情に賛同するものとし、委員長報告に反対の討論とさせていただきます。