討論:令和6年度昭島市一般会計歳入歳出決算認定
本日9月議会が終了しました。最終日に決算について以下の通り討論をしました。
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日程第1認定第1号令和6年度昭島市一般会計歳入歳出決算認定について、みらいネットワーク会派を代表し、意見を交えながら賛成の立場で討論致します。
1948年国際連合総会で採択された世界人権宣言 第一条では「すべての人間は、生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。人間は、理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神をもって行動しなければならない」、続く第二条第一項では「すべて人は、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治上その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、門地その他の地位又はこれに類するいかなる事由による差別をも受けることなく、この宣言に掲げるすべての権利と自由とを享有することができる」としています。誰もが、差別や暴力に苦しめられず、人権を尊重されながら穏やかに暮らし、生を全うすべきかけがえない存在のはずが、最大の人権侵害である武力紛争は、戦後80年を迎えた今なお、ウクライナやパレスチナなど世界各地で勃発しており、極めて憂慮すべき状況です。
国においては、今夏の参議院議員選挙で、人権や民主主義を真に理解せず、事実に基づかない外国人差別を主張した政党が議席を伸ばしましたが、事実誤認もさることながら、差別は断じて許されません。ひと度差別を許せば、次の差別を招きかねず、政治が差別を助長するのは言語道断、共生の解決策を示しその実現にこそ力を注ぐべきです。
しかし、毅然と対すべき政界では、いまだ排外主義の余波があり、さらには国際協力機構による「JICAアフリカ・ホームタウン」構想、福岡県の外国人の居住を想定したマンション建設計画、北九州市の学校給食のムスリム対応等、各地でも誤情報に基づき抗議が殺到する異常事態が生じており、排除に傾くことでの社会の不健全さや萎縮を、大変危惧します。また、人権保障の視点に加え、エネルギー資源・食料など大幅に輸入に頼り、少子高齢化の進展に伴い国内産業や社会保障体制も外国人労働者に頼らざるをえない国内事情を考えても、国際理解、国際交流、国際協力こそ肝要です。
先日、NPO法人ICANによる外国ルーツの若者の居場所づくりの事例を伺いました。ある駅前のロータリーで若者が迷惑行為を繰り返し、防犯カメラの設置と取り締まりの強化など当初は排除策がとられましたが、ICAN関係者が若者のニーズを探り、駅前に無料カフェを設けたところ、若者が悩みを相談し、さらにはやってみたいことを実現する居場所となり、地域の理解者の裾野も拡がるようです。このように、固定観念や巷に流布する情報で相手を決めつけ排除するのではなく、理性的にそして謙虚に、まずは生身の人間として相手を知り、相互理解を深め、課題があれば各所と連携しエンパワメントしつつ解決を目指すプロセスを粘り強く積み重ねることが、優しく多様性に満ちた共生社会をつくりあげ、平和で公正な社会をも構築するのではないでしょうか。
先月、市の中学生英語スピーチコンテストで、外国ルーツの生徒さんが「私は私。私はそのままで完璧なのだ」と力強く語っておられ感動しましたが、誰もが胸をはって自らを肯定し、多様であることが市の弾力・活力や強靱さに繋がるよう微力ながら力を尽くしてまいりたいと申し上げます。
さて、昭島市一般会計歳入歳出決算について、みらいネットワーク会派としては賛成いたしますが、いくつかの意見を述べさせていただきます。
まず、まちづくりの理念で「人間尊重」を掲げ、「市民が相互に尊重され、信頼しあい、健康で文化的な生活ができる社会の実現をめざす」市においては、人権啓発事業における児童生徒への各種施策実施を評価します。今後は部署連携し、子どもの権利の啓発・実践にも力をいれるべきと意見します。
また、市内保育園でわいせつ行為がありましたが、性犯罪・性暴力は、被害者の尊厳を踏みにじり、長きにわたり心身に甚大な影響を与えかねず、二度とあってはなりません。市として性暴力を防ぐ強い決意や、被害者に「あなたは悪くない」というメッセージを伝えるためにも、全力で対策を講じるべきです。有識者は子どもたちが性暴力の加害者、被害者、傍観者になることを防ぐ土台が、人権を基盤に幅広く学ぶ包括的性教育であるとしています。男女共同参画センターによる包括的性教育の実施を評価しますが、今後は子ども育成支援課から全園実施の後押しを、また、再三お伝えしていますが、教育委員会におかれては全校実施をご検討の上、人間尊重の先進市ともして頂きたいと意見します。
さらに、学校教育については、子どもの権利を基本に、不登校支援とそもそもの安心できる学校づくり、外国ルーツの児童生徒を通じた国際理解の推進、香害の啓発と対策など、誰一人取り残さない各種対応が求められます。同時に、教員の働き方改革も重要です。必要応じてコーディネーター等配置の上、地域連携推進を教員の負担軽減に繋げつつ、学校が、子どもたちが地域で豊かに育つ拠点に、そして地域の社会資源が結集し地域コミュニティを強固にする拠点にもなることを期待します。
また、みらい会派の調査から職員のメンタル疾患休職者が高止まり状態であることが明らかになりました。市民サービスの直接の提供者である市職員のメンタル疾患、長期休業は市民サービスの低下を招くと懸念し、これまでも強く改善を求め続けてきました。メンタル疾患の主要因は上司によるパワーハラスメント、カスタマーハラスメント、職場の環境・人間関係といわれています。ストレスチェックや保健士による面談等も理解はしていますが、大きな改善には至っていません。市長も職員は宝であるとし、ワーフライフバランスの徹底を目指しています。改善のためには、幹部・管理職に対するハラスメント教育を徹底すべきと意見します。また、信頼関係の構築や風通し良く、同僚や先輩と何でも相談しあえる明るい職場環境づくりが最も有効な改善策と私たちは考えています。休職後の職場配属についても本人の心情や意向等の配慮は欠かせません。狭き門をくぐり昭島市に就職し市民全体の奉仕者・サービス提供者として尽力頂き、定年まで働き続けられることを願い意見します。
次に、市ではもうひとつのまちづくりの理念として「環境との共生」を掲げています。この7月、国際司法裁判所は気候変動に関し、「清潔で健康的、持続可能な環境で生きることは、人権である」として、国際法上、国家には気候変動対策をとる義務があるとする極めて重要な勧告的意見を公表しました。市においても、2030年の目標達成に向け、市民・事業者と連携しながら着実に取り組む必要があります。
同時に命の危険に関わる熱中症については、庁内連携の上、対策を講じるべきです。とくにヒートアイランド緩和策の検討にあたり、GLP昭島プロジェクトの影響は看過できません。大規模緑地の喪失、建造物による風の道の変化だけでも気温上昇は生じ、緩和には樹木が非常に有効との専門家意見がありますが、かたや造成工事が始まり、樹木伐採が進みます。都の環境アセスメントに未記載の事項とはいえ、計画地の樹木を把握し、保存・創出を確固たるものにするよう求めます。あわせて、市内の危険樹木は確実に対処すべきですが、伐採・強選定については様々な市民意見を頂戴します。環境基本計画の中間見直しを、樹木の意義や、緑の質と量について庁内で共通認識を持つ機会にすべきです。また、緑と熱分布の実態を調査の上、環境基本計画上のみどり率の目標達成や、ヒートアイランド緩和を目指すべきと意見します。
その他、GLP昭島プロジェクトについては、事業者、市民と連携しながら環境影響の把握と必要応じた対策を講じる必要がありますが、公害紛争調停が行われており、市民不安に寄り添うとともに、関係者間の誠意ある協議が肝要であり、そのためには市の引き続きのご尽力が欠かせません。さらにGLP以外の開発も見据えて、情報公開・市民意見聴取と意見反映を担保するまちづくり条例の制定を期待します。
また、有機フッ素化合物いわゆるPFASについては、市と予防原則の立場・飲用暴露防止の考えは一致していること、市長会が都に対し調査箇所拡充を要望していることを心強く受け止めました。深層地下水100%供給を続けるためにも、市・都による水質調査箇所拡充と正確な情報提供、必要応じた対策を行い、市民の不安に確実に応えるべきと意見します。また、横田基地が起因とされる周辺のPFAS汚染による住民不安が深刻になっています。何度も指摘してきましたが、日米地位協定の日米環境補足協定に基づき、実効性のある基地内の土壌・水質検査の実施と公表を求めるべきと意見します。
次に、物価高騰下での水道料金・下水道使用料減免をはじめとする各種対策を高く評価します。居住支援協議会設立による住まいの確保はじめ、高齢者、障がい者、ひとり親などあらゆる立場の方々の生活を守る施策展開を期待します。
次に、児童センターについては、移動児童センターへの施策展開を評価します。子どもの「聞かれた」「変わった」という体験は肯定感醸成にも主権者教育にもなり、子どもの声を聴きながら、よりニーズにあった事業となることを期待します。他にも、放課後子ども教室等々、多様な居場所においては、大人本位に偏らず、そのときどきの子どもとともに常によりよい運営が試行されるべきと意見します。
次に、公民館・保健福祉センターの改修工事を控えますが、市民活動が縮小しないようあらゆる方策を検討し、場を確保すべきです。同時に東部エリアの新しい拠点、市民総合交流拠点については、引き続いての市民参加を期待しています。
次に、子ども・妊婦・高齢者など、多様な市民が楽しみながら心身の健康維持・増進が可能な生涯スポーツが水泳であり、プールは市民生活に欠かせないインフラです。学校の水泳の授業の保障も課題ですが、今後の総合的な整備を期待します。
最後に、予防接種事業について、国の「HPVワクチンの安全性に関するフォローアップ研究」によれば、ワクチン接種再開後、新規受診患者数が一定数おり余談を許しません。安全性についても接種対象者に確実に届く周知を行い接種判断の一助とするとともに、子宮頸がん検診こそ進めるべきです。
以上、何点かの意見を述べさせて頂きました。まちづくりの理念である、「人間尊重」「環境との共生」を揺るぎない基盤とし、多様な市民、事業者などステークホルダーとの対話、合意形成、協働による豊かで持続可能なまちの実現に期待を寄せ、本決算に対する賛成討論といたします。