【討論】2024年3月議会:PFAS対策を求める陳情

 日程第37陳情第1号 「地下水100%の水道水を安心して飲み続けるため早急なPFAS対策をもとめる陳情」について、みらいネットワーク会派を代表し、委員長報告に対し反対の立場から討論を行います。 

 有機フッ素化合物いわゆるPFASについて、現時点で科学的知見は国内外を問わず十分といえませんが、そのようななかで、昨年11月30日に世界保健機関傘下にある、国際がん研究機関は、PFOAを4つの発がん性分類のうちもっとも高く「ヒトに対して発ガン性がある」グループ1に、PFOSを「ヒトに対して発がん性がある可能性がある」グループ2Bに分類しました。

 一方で、全国各地でPFAS汚染が次々に明かになっている状況に対し、本来は国が主導的役割を担い、最新の科学的知見に基づき早急に対策するべきですが、国においては昨年7月に「PFOS、PFOAに関するQ&A集」、以下Q&A集と、「PFASに関する今後の対応の方向性」等発表したのち新たな公式見解がでていない状況です。

 都においては、次年度地下水検査の充実に取り組みますが、国や都の動向に甘んじることなく、基礎自治体としても市民の安全安心のため主体的に対策を模索すべきです。こと深層地下水100%の水道水を提供し、水道事業者である昭島市においては、立川市や福生市など近隣自治体のような独自調査を実施し、具体的数値を示すことで市民の安心に繋げながらデータを蓄積し、広域自治体と連携しながら汚染源特定にも繋げていくこと、また、万一高濃度の検出がされれば、速やかに対処できるよう備えることが肝要であり、今回5点の陳情項目は、いずれも非常に重要な問題提起であると考えます。

 まず、一点目の市内の各水源井戸および災害対策井戸について調査地点をさらに増やすなどPAFS汚染調査を積極的にすすめる要望につきましては、現在の市内3箇所の給水栓水いわゆる蛇口での調査にとどめずに、今後万一数値に変動があった際には、効果的な対応を速やかに実施できるよう各水源井戸の調査をすることは、深層地下水が市民の宝である自治体の責務です。

 例えば、立川市においては、市所有の揚水を行っている井戸に関し、PFOS、PFOA、PFHxSの水質分析調査を実施しました。国では、暫定目標値としてPFOS及びPFOAの合計値50 ng/Lを設定していますが、例えば昭島市境にあり、井戸の深さ102メートルのクリーンセンターは、PFOS36ng、PFOA14ng,PFOS及びPFOAの合計値50ng、PFHxS29ngでした。また、井戸の深さ160メートルの大山防災井戸は、PFOS321ng、PFOA144ng、PFOS及びPFOAの合計値465ng、PFHxS268ngと国の暫定目標値を超える結果となりました。近隣の状況を考えると、昭島市においても3箇所にとどめずさらなる詳細把握に主体的に取り組むべきではないでしょうか。

 また、災害対策井戸については、希望者に対し検査を実施する方針である一方、現時点では所有者から検査実施の要望がないことが建設環境委員会の質疑で明かになりました。まずは、市として希望者に対しては検査を実施することをひろく周知する必要があります。また、昭島市においては学校の井戸は芝生の散水用で飲用ではないため調査をしない見解ですが、PFASは水質にとどまらず、底質、生物及び大気中など環境中にあるといわれる状況です。飲用でないから調査は必要ないという段階ではありません。人体や環境に長期間残存する性質もあり早期発見が欠かせません。飲用せず散水の用途であっても、万が一にも児童・生徒がばく露しないよう予防原則に基づき調査をするべきです。また、数値を示すことで、根拠ない不安・風評被害を防ぐ効果があり、さらには地下水の全体像を究明するためにも調査すべきです。

 加えて、陳情文にある、市民団体実施の井戸の水質調査で暫定目標値を上回る深井戸があった件については、市として調査手法に懸念材料があるとの見解ならば、追跡調査をし、市民の不安に答えるべきです。以上、未解明なことが多いPFASについては、基礎自治体としても科学的データを主体的に蓄積させていくべきと指摘します。加えて、今後、市の公表する調査結果については、井戸の深さも明示することを検討すべきと意見します。

 二点目の、PFOS、PFOAの除去方法の研究を進め、地下水源の浄化、活用にむけて尽力する要望につきましては、例えば、武蔵野市では浅井戸や学校井戸を独自調査し、暫定基準を超えたものについては、逆浸透膜フィルターを備えた浄水器を設置するなど対策を講じています。昭島市においても、いざというとき、市民の安全安心のため即対応できるよう、どのような除去方法が考えられるか情報収集に努めるべきと意見します。

 三点目の、今後規制される可能性のあるPFHxSなどについても調査等の検討をする要望につきましては、市においてはすでに令和3年度からPFHxSについて水質検査を実施していますが、これを継続すること、また今後は国がQ&A集で示す、ストックホルム条約の廃絶対象として検討中の物質についても、必要応じて検査対象として検討すべきと意見します。

 四点目の、自治体が実施する地下水の独自調査・検査等に対し、東京都に財政的支援を求める要望につきましては、次年度都の地下水検査のなかで、昭島市においても4箇所における検査実施の予定がありますが、先に述べました通り、市としての独自調査にこそ踏み出すべきであり、その際には都に補助を求めるべきです。

 五点目の、国や東京都と連携の上、PFASによる汚染原因を究明し、その情報を市民にわかりやすく開示する要望につきましては、汚染源は自治体単体で究明できるものではなく、国や都、あるいは近隣自治体と連携し原因究明にあたるべきです。そのためにも、再三述べているとおりまずは調査箇所を増やす必要があることはいうまでもありません。
 とくに、横田基地が主な汚染源といわれる多摩地域のPFAS汚染について、昭島市においては深層地下水の流動調査結果の解析からも影響を受けていないとの見解ではありますが、基地内の土壌検査と水質検査の実施及び公表については、関係各所に強く求めるべきです。

以上により、当陳情については採択すべきものであり、委員長報告に対し反対の討論とさせていただきます。